「毎年確定申告しているけど、投資関係でもっと取り戻せるお金があるかも?」——そう思いながらも、複雑な税制に踏み込めていない投資家の方は多いのではないでしょうか。
現役薬剤師として投資・資産形成を実践してきた私(SUMAIRO)が、投資家が知っておくべき確定申告の控除と節税ポイントを、根拠のある数字とともに解説します。
結論から言えば、確定申告を正しく活用すれば、年間数万〜数十万円の税金を取り戻せる可能性があります。特に投資損失がある年・医療費が多い年・ふるさと納税をしている方は必ず確認してください。
投資家が確定申告で取り戻せるお金①:損益通算と繰越控除
損益通算とは
同じ年に株式や投資信託で利益と損失が両方あった場合、利益と損失を相殺(損益通算)できます。たとえば、A銘柄で50万円の利益、B銘柄で30万円の損失があった場合、課税対象は50万円ではなく差し引き20万円になります。
損益通算の例
A銘柄の利益:+50万円
B銘柄の損失:▲30万円
課税対象:20万円(税額:約4万円)
損益通算しない場合:50万円に課税 → 税額約10.2万円
繰越控除で最大3年間損失を持ち越せる
その年の損失が利益を上回り、損益通算しても損失が残る場合、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除できます(繰越控除)。暴落年に損失が出ても、確定申告で申告しておけばその後3年間の利益から差し引けます。
| 年度 | 損益 | 課税対象 | 繰越残高 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | ▲100万円 | 0円(確定申告で申告) | ▲100万円繰越 |
| 2年目 | +60万円 | 0円(60万円を繰越控除) | ▲40万円繰越 |
| 3年目 | +80万円 | 40万円のみ課税 | 0円 |
重要:NISA口座の損失は損益通算・繰越控除の対象外です。損益通算できるのは特定口座(源泉徴収あり)と一般口座の取引のみです。
投資家が確定申告で取り戻せるお金②:ふるさと納税(ワンストップ特例との違い)
ワンストップ特例と確定申告、どちらが得?
ふるさと納税には「ワンストップ特例」と「確定申告」の2つの申請方法があります。どちらを使うべきかは状況によって異なります。
| 項目 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 対象者 | 給与所得者(5自治体以内) | 誰でも |
| 控除の種類 | 住民税のみ | 所得税+住民税 |
| 手続きの手間 | 簡単 | やや複雑 |
| 損益通算との併用 | ❌ 別途確定申告が必要 | ✅ 同時に申告可能 |
投資で損益通算や繰越控除を行う場合は確定申告が必要になるため、ふるさと納税も同時に確定申告で申告する方が効率的です。ワンストップ特例を利用していた場合でも、確定申告する場合は申告し直さないといけません(ワンストップ特例は無効になります)。
ふるさと納税とNISAの最強の組み合わせについてはふるさと納税×NISAの最強組み合わせ -No.25-で詳しく解説しています。
投資家が確定申告で取り戻せるお金③:医療費控除
1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が10万円(または総所得の5%の低い方)を超えた場合、超えた分を所得から控除できます。薬剤師として患者さんに説明することが多いですが、これは確定申告でしか受けられません。
医療費控除の対象になるもの(例)
- 病院・歯科・眼科等の診療費
- 処方された薬の購入費(市販薬は原則対象外)
- 入院費(差額ベッド代・食事代も一部対象)
- 通院のための交通費(電車・バスの実費。タクシーは要件あり)
- 妊娠・出産にかかる費用
投資家が確定申告で取り戻せるお金④:配当控除(総合課税の選択)
配当所得を総合課税にすると有利になるケース
国内株の配当金は通常、源泉徴収(約20.315%)されています。しかし、確定申告で「総合課税」を選択すると、所得税率が低い人ほど税金が安くなる場合があります。
| 課税所得 | 所得税率 | 総合課税が有利? |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | ✅ 有利(10%の配当控除あり) |
| 195〜330万円 | 10% | ✅ 有利 |
| 330〜695万円 | 20% | △ ケースによる |
| 695万円超 | 23%以上 | ❌ 申告分離課税の方が有利 |
ただし、総合課税を選択すると配当所得が合計所得に加算されるため、住民税の負担が増える・社会保険料に影響が出る場合があります。所得状況によって有利不利が変わるため、シミュレーションするか税理士に相談することをおすすめします。
確定申告の効率的な進め方
年末に向けて準備すべき書類
投資家が集めるべき書類チェックリスト
- 証券会社の「年間取引報告書」(1月下旬〜2月に送付)
- ふるさと納税の「寄付金受領証明書」
- 医療費の領収書(医療費控除申請する場合)
- iDeCoの「小規模企業共済等掛金払込証明書」
- 生命保険の「控除証明書」
- 源泉徴収票(会社員の場合)
e-Taxで自宅から完結させる
確定申告はe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば自宅から完結します。マイナンバーカード+スマートフォンがあれば、証券会社のCSVデータを取り込んで自動計算もできます。2月上旬から準備を始め、2月16日〜3月15日の申告期間に提出しましょう。
まとめ:確定申告は「取りに行く」もの
- 損益通算・繰越控除:投資損失がある年は必ず確定申告で申告
- ふるさと納税:損益通算と同時申告が効率的
- 医療費控除:家族合算で10万円を超えたら申告対象
- 配当控除:課税所得330万円以下なら総合課税が有利な場合も
- iDeCo・生命保険:小規模企業共済等掛金控除・保険料控除も忘れずに
確定申告は「面倒なもの」ではなく、正しく知れば取り戻せるお金を確実に回収する手段です。特に投資家であれば、毎年確認する習慣をつけましょう。
❓ よくある質問(FAQ)
Q. NISAの損失は損益通算できますか?
できません。NISA口座の損失は、特定口座・一般口座の利益との損益通算や繰越控除の対象外です。これはNISAが非課税口座であるためです。NISAは利益が非課税になる一方、損失の活用もできない点を理解しておきましょう。
Q. 特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告は必要ですか?
原則、源泉徴収ありの特定口座なら確定申告は不要です。ただし、損益通算・繰越控除・配当控除の活用・損失の繰越申告などをしたい場合は、確定申告が必要(または有利)になります。
Q. ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告は同時に使えますか?
同時に使うことはできません。確定申告を行うと、ワンストップ特例は無効になります。確定申告の中でふるさと納税の寄付金控除を申告すればOKです。ただし申告を忘れると控除が受けられないので注意してください。
