「どう増やすか」より「どう使うか」を考えている人は少ない
新NISAについて調べると、「何を買えばいいか」「いくら積み立てるか」の情報はたくさん出てきます。でも、「積み立てたお金をどう使うか」について書かれた記事はまだ少ないと思います。
実はここが、長期投資において最も重要なフェーズのひとつです。
薬剤師として投薬後のフォローアップを大切にするように、投資も「積み立てた後」のことを最初から考えておく必要があります。今回は新NISAの出口戦略について、整理してみます。
新NISAの出口戦略で考えるべき3つのこと
出口戦略を考えるうえで、整理すべきポイントは3つあります。
① いつ売るか(タイミング)
② どれだけ売るか(金額・口数)
③ どの順番で売るか(口座・銘柄の優先順位)
① いつ売るか:「必要なとき」が正解
まず大前提として、新NISAには非課税保有期間に制限がありません(旧つみたてNISAは20年でした)。
つまり、急いで売る必要はなく、本当に必要になるまで保有し続けてよいということです。
ありがちな失敗は「株価が上がったから売る」「下がったから不安で売る」という感情的な判断です。
出口のタイミングは相場ではなく、自分のライフプランで決めるのが基本です。
- 老後の生活費として使い始める年齢(60歳・65歳・70歳など)
- 子どもの教育費が必要になるタイミング
- 住宅購入など大きな支出が見込まれる時期
「いつ、いくら必要か」を逆算してスケジュールを立てておくと、慌てて売らずに済みます。
② どれだけ売るか:3つの取り崩し方
実際に売る際の方法は大きく3つあります。それぞれの特徴を比較します。
定額取り崩し
毎月・毎年、一定の金額を売却する方法。
例:毎月5万円ずつ売る
- メリット:生活費として計算しやすい、家計管理が楽
- デメリット:相場が下がっている時に多くの口数を売ることになる(資産が早く減る可能性)
定率取り崩し
残高の一定の割合を売却する方法。
例:毎年残高の4%を売る
- メリット:相場に応じて自動的に売却額が調整される、資産が長持ちしやすい
- デメリット:売却額が毎回変わるため生活費の計算が難しい
定口数取り崩し
毎月・毎年、一定の口数(株数)を売却する方法。
例:毎月100口ずつ売る
- メリット:操作がシンプル
- デメリット:相場によって受け取り金額が大きく変動する
「4%ルール」は参考になる
資産運用の世界では「4%ルール」という有名な考え方があります。
毎年残高の4%を取り崩せば、30年以上資産が枯渇しない可能性が高い
これは米国の「トリニティスタディ」という研究から生まれた考え方で、米国株への長期投資を前提にしています。
たとえば2,000万円を積み上げた場合、4%は年80万円=月約6〜7万円です。
完璧にそのまま適用できるわけではありませんが、「大体これくらいのペースで取り崩せば長持ちする」という目安として頭に入れておくと有用です。
③ どの順番で売るか:口座・銘柄の優先順位
複数の口座や銘柄を持っている場合、どれから売るかも重要です。
課税口座(特定口座)を先に売る
新NISA口座は非課税なので、課税口座(特定口座)の資産を先に使い、NISA口座はできるだけ後回しにするのが税効率の観点から合理的です。
課税口座の利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座はゼロ。長く保有するほど複利効果が積み上がるため、NISA口座の資産は最後まで残しておきたいところです。
含み益が大きいものを残す
NISAの非課税メリットは含み益が大きいほど恩恵が大きくなります。含み損の銘柄や低パフォーマンスの銘柄から売り、含み益が大きい銘柄は最後まで保有し続けるのが理にかなっています。
心理的な落とし穴:「売るのがもったいない」問題
取り崩し始めると、多くの人が「まだ伸びるかもしれないのに売るのはもったいない」と感じます。
これは自然な感情ですが、投資は増やすことが目的ではなく、豊かな生活を送ることが目的です。使わないお金はただの数字に過ぎません。
薬でも「よく効く薬が手元にあるのに使わない」では意味がありません。積み立てたお金は、使ってこそ価値があります。
一方で、感情に流されて一気に全額売却するのもリスクがあります。定率や定額で少しずつ売ることで、高値・安値のどちらでも平均的な価格で売ることができます(これは積み立て時のドルコスト平均法の逆バージョンとも言えます)。
SUMAIROとしての考え方
私はまだ取り崩しフェーズではありませんが、今から出口を逆算して積み立てています。
目標はサイドFIREです。完全なFIRE(仕事を完全にやめる)ではなく、投資資産からの収入を土台にしながら、やりたい仕事や活動だけを選べる状態を目指しています。
具体的な数字としては、まず3,000〜5,000万円の資産形成を第一ゴールに置いています。4%ルールで考えると、3,000万円なら年120万円・月10万円、5,000万円なら年200万円・月約16万円の取り崩しが可能になります。薬剤師の仕事を続けながらこの水準に達したとき、初めて「何をするか、しないかを自分で選べる」状態になれると思っています。
経済的にある程度自由になったところで、本当にやりたいことを始めていく。その選択肢を持つために、今は地道に積み立てを続けています。
ゴールが明確だと、積み立てを続けるモチベーションがぜんぜん違います。「老後のため」という漠然とした目標より、「サイドFIREのため」という具体的なビジョンの方が、毎月の積み立てに意味が生まれると信じています。
まとめ
- 新NISAは非課税期間が無期限なので急いで売る必要はない
- いつ売るかは「相場」ではなく「自分のライフプラン」で決める
- 取り崩し方は定率(特に4%ルール)が資産を長持ちさせやすい
- 課税口座を先に崩し、NISA口座は最後まで残すのが税効率上の基本
- 「使うためのお金」という意識を持って、計画的に取り崩す
積み立てのゴールは「売らない」ことではなく、「豊かに使う」こと。出口まで見据えた設計が、本当の長期投資です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・投資手法の実行を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。